ESD の問題

ESD について

静電気放電 (ESD) とは、2 つの物質間で電荷が移動することです。一般的な例としては、カーペットの上を歩いた後にドアノブやファイルキャビネットに触れると静電気を感じることがあります。その場合、金属との接触時に「ショック」を感じ、火花が散ったり、パチパチという音がしたりします。

ESD はまず静電気の発生から始まります。1 つの物質(この場合は、靴底)と別の物質(カーペットが敷かれた床)が接触してから離れると、電荷の不均衡が生じます。靴底とカーペット敷きの床が接触すると、人体の表面に帯電が生じ、フローリングの床は電子を放出するため正極に帯電します。帯電状態は、最大レベルに達するか、人間が異なる電位を持つ別の物質の表面(この場合は、金属製のファイルキャビネット)に接触するまで続きます。そして人体が静電気放電状態であるため、触れた物質に静電気が移動します。

ESD は、電流と電圧がゼロの状態から最大になるまでの時間が非常に短いという点で、通常の過電圧イベント(スイッチおよびサージトランジェント)とは異なります。ESD 事象の電圧立ち上がり時間は、1 ナノセカンド未満です。これに対し、その他のトランジェントは、ピークに達するまでに 1 マイクロセカンド以上かかります。

国際電気標準会議(IEC)は、人体から発生する ESD 事象のモデルを作成しました。このモデルは、IEC のテスト仕様として、システム(コンピュータ、ネットワーク、携帯電話、セットトップボックスなど)が ESD 事象の影響を受けやすいかどうかを判断する際に用いられています。この仕様は、ESD 事象をシステムに発生させる方法や、ESD 事象を定義するさまざまな電圧と電流のレベルを数値化して示しています。ここでも、ESD 事象での電圧立ち上がり時間の速度に注意してください。